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カテゴリ:本について( 13 )

未来研究についてのはなし⑥

 最後に「未来研究」全体の反省を書いていきたいと思います。

 作品の内容については特に言いたいことはありません。次にもっといいものを作ろうと思います。反省というのは印刷のことです。
 だいぶ前に印刷のムラのことを述べましたが、オンデマンドで印刷したということだけでなく、紙の種類にもムラを目立たせてしまう原因があったのかな、とも思っています。ムラができたことがかなりショックだったので、自分なりにいろいろと考えました。予算的にはオフセットでは到底作れません。ではオンデマンドで印刷する場合、失敗を避けるためにはどうしたらいいのか?ということです。

 「未来研究」の本文の紙はマットコート再生紙R100 135kgという、少しだけツヤがあり、ふつうの紙よりもわずかにグレーで、本文用紙としてはかなり厚めの紙を選びました。この紙選びに5000時間くらいかけたのですが、前作の「トレモロ」での反省点を踏まえ、裏透けがしないような紙を、というのが第一条件でした。加えて、黒が鮮やかに印刷される紙でなければなりませんでした。紙のサンプルとにらめっこしながら長時間悩み続け、一番失敗しないと思われたのがマットコート紙だったわけです。

 結果裏透けもせず、黒も鮮やかに印刷されたわけですが、清潔なつやっとした質感のせいで、かえってムラもはっきりと目立ってしまいました。お金がないのでどこかで妥協をしなければならないわけですが、印刷の発色と引き換えに風合いの強い「味系」の紙を使うか、ベタ面の画を避けるかの2択かな、と思います。黒いベタ面は好きなのですが、そればっかりに頼りすぎるのも良くないな、とも最近は思っています。
 それから自分が失敗したと思うのは紙の厚さです。紙が厚い分裏透けは全く無いのですが、ページをめくるときの感触が硬いのです。もう少し薄くて、めくるとピラッとした紙の音が鳴る方が好みでした。

 表紙の印刷についてはほとんど完璧にできたと思います。あるとすれば裏表紙の青色がもっと無機質だったらとか、背の部分の文字の黄土色がもうちょっと明るく出ていればとか、そういった自分にしかわからないような些細なことです。表紙はヴァンヌーボVGスノーホワイト195kgという紙を使いました。この紙も本文用紙とともに5000時間くらい悩んで選んだわけですが、風合いのある手触りなのにインクがのったところはグロスっぽいツヤが出て、鉛筆のドローイング部分なんかはかなりリアルな光り方になっていると思います。

 これらの点を踏まえて、これからの本づくりをどのような展開にしていこうかいろいろと考えを巡らせています。次回は挿絵の役割を少し変えてみようと思います。「トレモロ」と「未来研究」は文章と図画のバランスがだいたい半々でしたが、次回は文章が主体の本にしようと思っています。そして挿絵はドローイングから選ぶ。「未来研究」では文章に合わせて画を描きましたが、正直あまり上手くいきませんでした。「花火」はわりと映像的な文章だったので何とかなりましたが、もともと文章の作品はビジュアル的な表現がむずかしい事柄を書いているつもりなので、画にしようがない、ということを強く感じました。
 紙も薄くしたいので、レイアウトを工夫して多少裏透けがあっても気にならない構成にしようと思っています。簡単に言えば余裕のあるレイアウトといいますか、白紙のページもあっていいかなと思っています。

 そのうちには絵本のようなものも作ろうと思います。そのときには「未来研究」くらいの紙の厚さで、表紙もしっかりしたハードカバーで作りたいです。
 僕がいま最終的に夢見ているのは「星の王子様」や「モモ」や「ムーミン」ような作品を作ることで、絵本よりも児童文学に寄ったものです。これらは作者本人が挿絵を描いています。僕が創作によってご飯を食べていけるようになった自分を想像するとき、絵だけを描いている自分ではなくて、世界中の言語で翻訳され、何十年も読み続けられるようなひとつの本を作っている自分を想像しています。

 今年は最低でも1冊は本を作り、絵は新作を10作以上描き、滞っているドローイングを巻き返すのが目標です。いつもこのmemoを読んでくれている数人のみなさん、ありがとうございます。ブログレポートで訪問者数を毎日チェックしては一喜一憂しています。今年もよろしくお願い致します。
by msk_khr | 2013-01-02 21:53 | 本について

未来研究についてのはなし⑤

 「未来の音楽家のためのエチュード」。
 この作品は難産でした。なにせ楽譜を作らなければならなかったからです。頭の中でイメージしていたときは文中にちょっとずつ譜面を挿むようにしようとか、音符の説明をわかりやすく図で描こうとか考えていたのですが、本が縦書きだときれいに入らないことにすぐに気がつきボツに。五線譜ノートを買ってきて手書きで書こうかとも思いましたが、検索したら結構楽譜作成のフリーソフトが転がっていたのでそれを使ってみることに。「MuseScore (ミューズスコア)」というサイトで無料でダウンロードできますので、興味のある方はぜひ遊んでみて下さい。操作に慣れるのにはちょっと時間がかかったものの、曲を作りながら音を確認したいときはすぐに再生して聞くことができたので楽チンでした。

 曲づくりをしてみてわかったことは、絵を描く作業と似ているな、ということです。「未来の音楽家のためのエチュード」を作る上での条件として、まず4分の4拍子で、「2分音符」「4分音符」「8分音符」「4分休符」「8分休符」をそれぞれ1回以上登場させ、バイエルに出てきそうな真面目くさいメロディにする、というのがありました。これは本文の内容と合致させるためです。一旦それで作ってはみたものの、ちょっと時間を置いて聞いてみるとなんとなく引っかかるところが見つかって部分的に修正したり、そもそも長すぎるんじゃないかと思って構成を大きく変えたり・・・。普段絵を描くときの作業方法と全く変わらないのです。文章を作るときも同様。ひとつ作るのにここ数年の携帯電話くらいの改良を重ねないとできあがりません。人によっては一度書いたものは直さない人もいるかもしれませんが、自分の場合は納得のいくまでとことんこねくり回さないと気が済まないタチのようです。

 「トレモロ」の静かな終わり方とは逆に、「未来研究」は明るくさわやかに終わらせたいな、という気持ちがあったので「エチュード」を最後にもってきてみました。長めの文章を最後に入れるのもかっこいいかな、とも考えてのことです。しかし長いといってもたかだか4ページちょっとのもので、それでこんなに苦労したのですから、世の中の文章作家というのは本当にすごい人たちだと思います。次の本は短めのものを多めに収録したいような気がしています。その辺の展望も含めつつ、「未来研究」全体の反省を次週してみたいと思います。

〜次回へつづく〜
by msk_khr | 2012-12-26 23:29 | 本について

未来研究についてのはなし④

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 「花火」について。
 今年の夏、初めて代官山の蔦屋書店に行ったときに見た光景をもとに書いた作品です。その本屋さんはお客さんがおしなべてクリエイティブな雰囲気を放っていた上、商品の陳列の構成もお客の創作意欲をかきたてるために作られているかのような「やりおる」感じだったので、僕はいとも簡単にトレモロスイッチ(作品のアイディアが浮かぶときに入るスイッチ)が入って店を出るときには「ああああ」という気分になっていました。そこにきて花火との遭遇。感動を忘れないうちに携帯電話を取り出して、思い浮かんだ最初の一文を打ち込んだのでした。

 見開きの挿絵についてはひとつ自分が発明したと思っている線があって、それというのはところどころに散らばっているギザギザの線なのですが、あれは「ある道具」を利用して描いています。ずいぶん前に打ち上げ花火をデジタルカメラで撮ったときに、それが手ぶれしたのかシャッター速度が遅かったかなんかで火花が螺旋状に飛んでいるように写って、偶然にもその「ある道具」で遊んでいるうちにそんな感じの線が描けたのが面白いと思って使いました。どんな道具を使ったのかは秘密です。

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 秘密をばらすと「歯車のふち」です。

〜次回へつづく〜
by msk_khr | 2012-12-19 23:47 | 本について

未来研究についてのはなし③

 「やぶれたきりがみ」について。
 小さいころの自分の体験を元に書いた作品です。本当は水色ではなくうすピンク色だった気がするのですが、そのような細部の変更以外はほとんど在りし日の記憶をそのまんま描写しました。

 挿絵に使用するために、実際に何枚かきりがみを作りました。6ページ目の下にあるきりがみがそれらです。一応文中の色に合わせてあります。「きりがみ」は表紙の絵にそのまま使おうと思っていたんですがやめました。実際に作ってみると思っていたよりもダサイ感じになったからです。その代わりにおまけとしてきりがみを一枚本に挿もうか、とかも考えたのですが、それもやめました。単純に面倒だったからです。
 このように「やぶれたきりがみ」は「未来研究」において主役級の役割を果たす予定だったのですが、いつの間にか目立つ出番がなくなり、最終的に4作品が揃うといちばん特徴のない感じになってしまいました。

 余談ですが僕はピアノが非常に好きで、音も好きだし形も好きだし、何よりも色が好きです。いちばん最初にピアノを黒く塗った人はすごい。完璧に美しい楽器だと思います。グランドピアノも好きですが、一般家庭に良くあるようなアップライト型のピアノがなんだかんだで好きです。僕自身は弾けないのですが母が良く弾いていました。自分の根っこになるところにピアノという存在はあるような気がします。心の中に新しい家を想像するとして、その中に自由にものを置きなさい、と言われたなら、最初に必ずピアノを置くだろうと思います。

 そんなピアノが重要なモチーフとして登場する「やぶれたきりがみ」は、他の作品よりもちょっとだけ気持ちの多く乗っかった作品です。

〜次回へつづく〜
by msk_khr | 2012-12-12 02:27 | 本について

未来研究についてのはなし②

 表題作「未来研究」について。
 元ネタは大学生の頃に作っていたのですが、それを大幅に書き直して完成させました。
 3ページ使ったこの作品、もともとは最初のページにテキスト、次の見開きで下の図画が入る予定でした。
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 しかし冷静に見てみるとあまり面白くないというか、やっぱり絵は手描きの素材の方がいいな、と思ってボツにしました。斜めに入っているグラデーションはレインボーカラーのマスキングテープをきれいにノートに貼って、モノクロ変換したものです。もしテキストのない絵だけの作品だったらこれでもありかと思うのですが、文章を読んだあとに見ると妙に淡白な感じになってしまう気がしたので掲載をとりやめました。

 結局、テキストをグラフィックに組み込む、というアイディアで落ち着きましたが、「未来研究」収録作品全体に流れる「崩壊ー再生」の連鎖的イメージが、ビジュアル的に何となく表現できたかなと思っています。

 題名については4作品の中でいちばん頭を悩ませ、途中まで「地球がほろびたら」というクソださい仮題で保存していました。本当に題名の付けようがなかったので文中から抜き出したのですが、内容と少しずれても構わないから響きの良いものを、と考え直すことにしました。
 毎日考えているうちに「未来考証」という言葉が浮かび(「時代考証」から発想しました)、いろいろと調べていったら「未来学」という言葉があると知り、ようやく「未来研究」という言葉に辿りつきました。ウィキペディアは本当に便利です。「未来学」を研究する「未来学者」という人たちもいるようです。参考文献としてリンクを置いておきます→なかなか面白いことが書いてありますので興味のある方は読んでみて下さい。

〜次回へつづく〜
by msk_khr | 2012-12-05 04:07 | 本について

未来研究についてのはなし①

 自主制作本「未来研究」について、何回かに分けて書いていきたいと思います。「作者のあとがき」のようなものです。内容の核心に触れるネタバレはありませんのでご安心を。ただし、「未来研究」を読んだあとの方が意味が分かると思います。

 まずはタイトルについて。
 前作「トレモロ」が完成したときに、すでに次回作のタイトル案がいくつかあり、「フラットストーリー」という仮題で最初は制作を進めていました。本当に初期の段階では結構文章の量の多いものを入れるつもりで、しかも童話のようなものを考えていたので、「ストーリー」という言葉をタイトルに入れようと思っていたわけです。
 しかしその作品がどうにもまとまらなかったのでボツになり、そしたらあまり「ストーリー」感のない本になりそうだったので、残念ながらタイトルも却下ということになりました。
 そのあと仮題で「ジグソーパズル」というのを付けました。これは「やぶれたきりがみ」に出てくる言葉から引っ張ってきたもので、「トレモロ」のとなりに並ぶ言葉としてはきれいだったのでしばらくこれだったのですが、本が完成に近づくにつれ、全体を通してみてもとくに「パズル」感はないかな、と思ってまたボツに。
 「花火」から発想し、ちょいダサをねらって「ファイヤープレイヤー」にしたり、「未来の音楽家のためのエチュード」に出てくる「四分音符」からとって「クオーター」にしてみたりと、ものすごく何周もした結果「未来研究」に落ち着きました。最初の作品のタイトルも同様に長いこと決まらず、それが「未来研究」に決まると同時に本のタイトルにもしてしまったのです。まさか漢字になるとは思いませんでした。

 4作品のうち2つは「未来」に関するもの、もう2つは「過去」に関するものになっているので、半分は「未来研究」ですが半分は「過去研究」です。収録作品の「未来研究」についてはまた来週に書きたいと思います。

〜次回へつづく〜
by msk_khr | 2012-11-27 23:29 | 本について

トレモロについてのはなし⑦

 最後に「トレモロ」全体を振り返ってみます。
 まずは「トレモロ」を作るときに特に参考にしたものを書き連ねたいと思います。

 「ノアラとヨッコラ」。文と絵=西脇一弘。
 大学生のときに出会った本で、「トレモロ」を作る直前に読み返したことが「銀河拾い」と「音楽の終わり方」においての文体に影響しています。作者の西脇一弘という方はミュージシャン兼画家で、「ノアラとヨッコラ」は本人初の書籍。ノアラ視点の物語に素敵な挿絵がサラッと入った詩的な中編小説です。「トレモロ」の最後に載せたプロフィールの書き方の参考にもしました。
 こちらのサイトで西脇一弘さんの絵が見られます。

 「わたしのおじさん」。湯本香樹実・作、植田真・画。
 小学生のときに「夏の庭-The Friends-」を読んで以来、湯本香樹実さんの本は全部読んでいるのですが、「わたしのおじさん」は植田真さんというすごく好きなイラストレーターの方が挿絵を描かれているので、最高の一冊といっても言い過ぎではありません。
 「トレモロ」に使っているフォントは教科書体というやつで、国語の教科書のような、のどかでちょっと生真面目な雰囲気をイメージしました。一般的に小説で使われる書体の多くは明朝体なのですが、「わたしのおじさん」は珍しいことに教科書体なのです。
 植田真さんのサイトはこちらです。

 「スカートコードブック」。発行・澤部渡。
 ポップバンド・スカートの曲のコード譜が収められた12ページの冊子。これを見ながら僕はギターを練習中です。
 「トレモロ」をホッチキス留めの簡素なかたちにしたのは、このコードブックが白黒コピーを束ねてホッチキスで留めただけの超シンプルなものだったので、それを真似したのでした。300円という価格設定も、コードブックの200円に近づけたかったわけです。プロフィールのとなりの「発行」とかの記述の感じも参考にさせていただきました。コードブックの販売はこちらのサイトにて(2012年8月現在品切れ中)。
 スカート主催の澤部渡さんのサイトはこちら。いくつかの曲が無料で聴けるコーナーもあります。

 さて、いろいろなものに影響を受けながら作った「トレモロ」ですが、なぜこのような大した利益にもならない本なんか作ったのか、という話しです。
 前にも書いたかもしれませんが、美術作品というものは高すぎる、という思いが自分の中で非常に強くなってきて、誰にでも手に入れることのできる値段の作品を作りたかったという理由がひとつ。
 画廊で展覧会を開けば無料で作品を見てもらえますが、自分の場合、画廊というのは洋服屋さんと同じくらい気が散って、ゆっくり絵なんか見られない・・・。やっぱり自分の作品は、一人ひとりに部屋でこっそり見てほしい。そういうわけで「トレモロ」は夜中に自室でそっと開くのに適した本を目指しました。
 しかも「トレモロ」は今後、個展を開くようなことがあれば物販が可能です。画家は一冊くらい作品集を作っておいても損はないような気がします。

 上に書いた諸々の理由のほかに、単純に本を作りたいという気持ちもありました。自分の場合、作品を通して描きたいテーマやモチーフというのは決してたくさんあるわけではなく、リトグラフの作品も「トレモロ」で書いた文章の作品も、異なる方法で同じようなことを表現しようとしています。それが成功しているかどうかはわかりませんが・・・。ともかく、文章を書くのは絵を描くのと同じくらい好きなことなので、これからはどちらも平行して作っていくつもりです。
 それらが合わさってかたちになっているのが「本」という媒体です。本づくり自体、作品づくりと同様に非常に楽しいものでした。ページの構成、書体、紙の種類の選択・・・。「本」という表現手段に僕はとても大きな可能性を感じます。本当に作りたかったのは本だったのかな、という気さえしています。

 「トレモロ」は全ページ、Adobe社のIllustratorというソフトを使って作りました。印刷はCanonの家庭用プリンターで行いました。思った以上に印刷と製本に時間がかかったので、次回作は印刷所に頼んで、少しだけしっかりしたものを作りたいと思います。できれば挿絵はすべて描き下ろして、ページ数ももう少し増やして・・・。参加できるかはまだわかりませんが、11月の「文学フリマ」に向けて頑張って作ろうと思っています。
by msk_khr | 2012-08-25 23:58 | 本について

トレモロについてのはなし⑥

 「トレモロ」について。
 本のタイトルを「トレモロ」という言葉に決めたあとに作った作品です。表題作として、本全体の雰囲気を象徴するようなものをと思い書きました。
 「トレモロ」を作ってから「トレモロ」という言葉を頭の中で言いすぎて、ゲシュタルト崩壊ぎみになってしまっています。もはや自分の名前と同じくらいに「トレモロ」に愛着を感じています。たぶん今ここで「トレモロ」を連発していることで、これを読んでいるあなたも「トレモロ」が「トレモロ」に見えなくなってき始めているのではないでしょうか。ここまでの6行足らずのあいだに「トレモロ」が8回も登場しています。ぼくは「トレモロ」という文字を見るだけでなく心の中で唱えまくっているので、脳内が「トレモロ」でいっぱいになってしまいました。気が狂いそうです。「トレモロ」の飽和状態です。もう「トレモロ」を知る前の自分に戻ることはできないでしょう。

 「2012年5月15日のドローイング」について。
 これは入れるか迷ったのですが、表紙絵にもなっているし、絵自体がかなり気に入っていたのでおまけのような感じで載せておきました。モノクロ印刷で原画の雰囲気は著しく損なわれていますが、それは視覚芸術における逃れようのない運命ですから、むしろ異なるイメージを楽しもうと思っています。原画はここにありますが、今見ると少し鮮やかすぎて、むしろ表紙の印刷くらいに色が沈んでいる方が自分としては好みだったりします。
 気付いた方もいるかもしれませんが、2012年5月15日〜17日のドローイングが3日連続で「トレモロ」に採用されています。これは意図して選んだわけではなく、たまたまこの辺りに「トレモロ」のイメージにぴったりくる作品が続けて描けていたのです。おそらくその頃のぼくは何かしらの作品の影響を受け、かなり「トレモロ」な気分だったんだと思います。

〜次回へつづく〜(次で最後です。総まとめ的なことを書きたいと思います)
by msk_khr | 2012-08-18 23:34 | 本について

トレモロについてのはなし⑤

 「2011年12月5日のドローイング」と「2012年5月16日のドローイング」について。
 この見開きのページはいちばん紆余曲折がありました。前者の素材は軽やかで楽しい感じなので、「音楽の終わり方」のあとに見開きで入れるつもりでいたのですが、次のページに「2012年6月14日のドローイング」を予定していて、その透けた色が絵を邪魔してしまうために左ページに暗めの絵を持ってこなければならなくなりました。
(「六つの質問」を入れたのも前ページの絵の裏透けが気にならないようにするための工夫だったりします。)
 両ページとも、裏から透けているグレーの形も絵の一部として考えているので、いっしょに見ていただけるとうれしいです。
 前者の原画はこちら。後者はこちらです。

 「2012年6月14日のドローイング」について。
 「トレモロ」のページ作りに取りかかったのがこの日付の前後で、「ドローイングのページも入れよう」と思ってとりあえず最新のドローイングをモノクロで印刷してみたらなかなか良い感じになったので、そのまま採用となりました。いちばん最初にできて、最後まで変更点のなかったページです。
 「トレモロ」の綴じ方はホッチキス留めですが、それにもひとつ理由があり、このページを見開きでまっすぐな長方形の絵に見せたいというねらいがありました。普通の単行本のような、背にのりを付けた綴じ方だと、完全に平らに開くことができなくなります。今度本を作るときは印刷所に頼もうと思っているので、このような絵の見せ方は今回限りです。
 原画はこちらのページに載っています。

〜次回へつづく〜(そろそろ終わります)
by msk_khr | 2012-08-11 21:59 | 本について

トレモロについてのはなし④

 「音楽の終わり方」について。
 自分の体験と創作とを絡めて作った文章です。「銀河拾い」が暗めだったので、こちらは明るい感じにしようと思いました。
 前回紹介した「麦ふみクーツェ」は、ぼくが高校時代に吹奏楽部でクラリネットを吹いていた頃に読んだ本です。
 「ねこ」というあだ名の「ぼく」が主人公なのですが、物語はすべてその「ぼく」の口から語られます。自分が10代の頃に好きで読んでいた小説には、そんなふうに主人公が物語を語る文体のものが多くて、その影響が今回の「トレモロ」に思い切りあらわれています。
 「音楽の終わり方」は「銀河拾い」と違ってセリフもなく、ひたすらひとり語りの文章なので、毎週書いているこのブログみたいな感じで書きやすかったのですが、「音楽のー」の「ぼく」は中学一年生くらいをイメージしているので、それを考えると創作ということになります。

 「2011年11月20日のドローイング」について。
 原画はここに載せていますが、それを再編集した作品です。
 宇宙的な雰囲気と音楽的な雰囲気、どっちも感じられるようなものができたので、どこに挿んでもいいかな、と思っていたのですが、最終的にこの位置に落ち着きました。
 「トレモロ」全体の構成として、暗めに始まり、山なりに明るくなって、最後に向かってだんだんまた暗くなる、という、「夜ー昼ー夜」のようなイメージがありました。このドローイングがいちばん山のてっぺんに位置する作品なので、最も開放的な感じのページになっています。

〜次回へつづく〜
by msk_khr | 2012-08-06 03:34 | 本について