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個展終了、悲しい事件

 ギャラリーアライさんでの個展が無事に終了いたしました。お越し下さった皆様、本当にありがとうございました。西宮市大谷記念美術館ではボローニャ国際絵本原画展が9月28日まで開催しております。そちらも何卒よろしくお願い致します。

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 去年に引き続き、ボローニャ入選者を取り上げる「ギャラリーさんぽ」という企画のひとつとして僕を取り上げて下さいました。今年は西宮市大谷記念美術館とその周辺のギャラリー4つの企画展を回ると、オリジナル缶バッジがプレゼントされるようです。僕のも作って頂きました。絶対に缶バッジに向いてない絵柄ですが、一周回ってむしろいいかもね、ってなるような深みのあるデザインです。作家自身の分も別で用意してもらえるそうですが、自分の絵の缶バッジは確実に付けないと思います。

 個展期間中、悲しい事件がひとつありました。ギャラリーに向け僕は電車に乗っていました。大阪の中心部の梅田駅から、ギャラリーのある甲子園駅までは阪神線で15分程度です。展示2日目の日曜日に僕は足下にカバンを置き、車両のドア付近に立っていました。ちょうど今回の展示は高校野球のシーズンと重なっていて、その観戦に向かう人が多かったので車内は割と混みあっていました。とはいえ休日出勤らしきOL風の人も中には混じっています。ふと横を見ると、すぐ側に立っている女性のあごに何か付いていました。それは2センチくらいのやぶれたティッシュでした。あごの真ん中にくっついていました。それが車内空調の風によってかすかに揺れています。僕は目をそらしました。そして気持ちを落ち着けてから改めてその人のことを観察してみました。

 40〜50代くらいの女性。おそらくこれから仕事に行くか、そうでなくとも確実に人と会うであろうというきちんとしたバッグとジャケットを身に付けています。なんとなく高校教師を思わせる風貌です。しかしそのあごには真っ白いティッシュが。ファッションとは思えません。結構鋭い角度で付着しています。何を焦っていたのでしょう。メイクをしたあとにティッシュで思い切り顔を拭くことなんてないだろうに。自分の母親だとしたら泣きたくなります。

 これは教えてあげないとかわいそうだと思い、声をかけようと思いましたが、なんて言えばいいのかわからなくて若干ためらいました。「あごにティッシュ付いてますよ」などと直球で伝えるのは相手にひどい動揺を与えかねないです。しかも電車はしばらく停車しないわけだから、そのやり取りをしたあとに至近距離で数分間乗り続けるのは気まずすぎるし。もう自分の知ったこっちゃねーやと、気づかなかったふりをしておさらばするという考えも浮かびました。しかしその人が職場でするであろう、最初の挨拶の清潔な笑顔を想像すると背筋が凍りました。どうすれば良いのでしょう。僕は考えました。

 目的の甲子園駅に着いて列車のドアが開いた直後、僕はその女性とすれ違う瞬間に自分のあごを指しながら「何か付いてます」となるべくスマートに伝えました。女性は「えっ」と言って慌ててあごを指でこすりました。周りの乗客に気付かれる前に無事にティッシュは取れました。そしてティッシュは床に置いた私のカバンの上にゆっくりと落下しました。その瞬間をみんなが見ていました。
by msk_khr | 2014-09-05 15:55 | 日々のこと