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「未来研究」完成

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 絵画と版画とで違うことのひとつに、加筆の可能・不可能という違いがあります。絵画は自分の納得のいくまで仕事を詰めていけますが、版画の場合、一度元の判を完成させて刷ってしまったら書き加えることは不可能。できあがった作品を受け入れるしかありません。自分がイメージしていたものと完全に一致するものは絶対にできないので、「次こそは完璧なものを」という気持ちで僕は次の作品に取りかかるのです。

 本の制作も要は版画と同じです。「未来研究」を作るにあたって、絵画や版画でエスキースを作るように、家のプリンターで何度も試作を重ねて、データ上では完璧なところまで詰めていきました。本として開いたときの見え方にも注意し、特に誤字・脱字は絶対にないように何度も読み直しました。しかしやはり版画と同じように、自分のイメージと全く同じものはできませんでした。レイアウト的には大きな減点はないのですが、印刷に関しては心残りがあります。通販印刷で作ったのですが、最高品質のオフセット印刷ではなく、値段が安く少部数印刷に向いたオンデマンド印刷というのを選んだのがやっぱり原因かな、と思います。

 オンデマンド印刷というのはいわゆるレーザープリンターやインクジェットによるプリントのことで、版を作らずデータを直接プリンターに送る、「すごくいい家庭用プリンター」のようなもので刷る、ということです。コストはオフセットの3分の1くらいで、印刷品質もとてもよいので趣味で本を作るにはこれが丁度よい印刷方法だと判断しました。それのどこが不満なのかというと、暗い絵のページの黒がかなりムラになってしまったのです。オンデマンド印刷が苦手とするのがフラットな「ベタ面」なのですが、「未来研究」はそんな真っ黒い色面を思い切り多用しちゃっているのです。
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(1冊1冊ムラが違います。逆にそのムラがきれい、という捉え方もありますが・・・)

 いつかオフセット印刷で、いろんな紙で試し刷りをして、詰めて詰めて本づくりをしてみたいものですが、そんなことをしていたらお金がいくらあったって足りないでしょう。これは絵画にも版画にも本の制作にもいえることですが、たくさんの作品制作の中で常に実験を行って、最高傑作を毎回更新していくように作っていくことが大切なんだと思います。
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「未来研究」

・未来研究
・やぶれたきりがみ
・花火
・未来の音楽家のためのエチュード

 文と画による自主制作の本です。A5/全24頁/税込500円。
 11月18日(日)開催の文学フリマにて、ウー49の席に座って11:00〜13:00まで販売します。イベントは17:00までですが、僕はたったの2時間しかいられません。そのあととなりの席の方々にお別れの挨拶を済ませ、船橋の美術予備校に猛スピードで向かい、芸大模試の審査と講評をしなければならないのです。ホビータイムから仕事へのターンが鋭角すぎて気持ちの切り替え方がわかりません。
 イベント後はメール受付や店舗委託で販売予定です。お店は全く決まっていませんがZINEのイベントに積極的に応募していこうと思います。

 「トレモロ」と「未来研究」とで違う点を一つ挙げるとすれば、今回はなんと作曲をしています。みなさまぜひとも買って読んで、奏でてください。よろしくお願い致します!
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by msk_khr | 2012-11-15 23:22 | おしらせ