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memo

スカート学園祭ライブ

 武蔵大学の学園祭に行った。ポップバンド「スカート」の無料ライブを見るためだ。共演するバンドの面々も、近ごろ売れ始めてるっぽい感じだったので、これは早めに行って場所を取らないとまずいだろうと思ったが結局スカートの出演ギリギリの時間に着く電車に乗ることに。その日はそれに加え友人の個展とよしもとのお笑いライブを見るという忙しい日だったので、新桜台→八丁堀→渋谷がいいのか、はたまた八丁堀→新桜台→渋谷のルートがスムーズなのかをパソコンの前で検討しているうちにそうなってしまったのである。

 結局、交通費はかさむものの前者ルートに決め、新桜台駅に着いたはいいが当然迷った。地図はプリントしてきたし、地下鉄の出口から右か左を直進すればたどり着く簡単トラベル。右に行ってから左に戻ったが、やっぱり正解は右だった。スマートフォンが欲しい。
 武蔵大学に着いたはいいがキャンパスでまた迷った。スカートライブ開始まであと20分。ライブが行われる4号館が見つからない。裏口みたいなところから入ってしまったのがまずかったか。3号館も5号館も見つかるのに4号館だけがない。2号館も7号館も見つかるのに4号館がない。すごくのどが乾いたので校内の自販機で午後の紅茶のレモンティーを買った。

 おそらく体育館的な広さの場所でやると思っていたのがまちがいだった。ものすごく端っこの地下への階段の前にライブのタイムテーブルがはってあった。外には数名の客と数名のスタッフの姿。階段の前でスタッフが門番みたいに立っているのであれ? と思った。もしかして入場規制がかかっているのかもしれない。ライブ開始10分前はさすがに遅すぎたのか。スタッフに事情を聞く勇気がなかったので、他のお客さんの様子を「こういう状況慣れてますよ」的な空気を出しながら伺うことにした。
 どうやら定員オーバーではなく、バンドが変わるごとにお客さんを一旦外に出すというシステムらしい。ほっと一安心してレモンティーを飲みながら、お客さんの層を観察した。若い女性がひとり。若いカップルが一組。30代っぽい女性、男性がちらほら。特筆すべきことはない。みんな「普通」をテーマにお越し下さい、とでも言われて来たかのようなノーマルっぷりだった。
 前のバンドの「ザ・なつやすみバンド」が終わったようで、地下からお客さんがどっと溢れ出てきた。みんななぜか上着を脱いでいる。そして一様に汗ばんでいる。え? って思った。そんな感じ? 「ザ・なつやすみバンド」はYoutubeで見たことがあるけど、割とまったりとした雰囲気のバンドだった気がしたけど・・・。

 「会場が大変お暑くなっておりますので薄着になってお入り下さい」という生まれて初めて聞いたスタッフの案内のとおり、会場は大変お暑くなっていた。12畳くらいの薄暗いスペース。ちょっとしたステージの前には女の子がすでに4、5人座っていた。僕はけっこう早めに並んでいた人だったらしく、その後ろの2列目に立つことができた。

 ライブが始まるとみんな体をいい感じに揺らし始めた。僕が音楽のライブでいちばんやめてほしい行為だ。べつに他の客をとがめているわけではない。自分がいい感じに体を揺らすのが下手だからだ。初めてライブというものに行ったときに結構な年齢を重ねた方々が「なんか自然に体が動いちゃうんだよね〜」というふうにごく自然に肩を揺らすさまを見て衝撃を受けた。みんなそんなにリズム感いいのか。友達と来ている人は友達にノリノリな自分を見られて恥ずかしくないのか。
 たぶんライブを盛り上げるためのサクラと思われる前一列の女子はもちろん、右を見ても左を見てもみんな体を揺らしている。僕もそうしないとバンドに失礼になるんじゃないかと思って試みるが、あまり上手くいかない。とはいえこれでも高校時代は吹奏楽部でクラリネットを吹いていた人間だ。四分の四拍子とかはわかる。しかし曲に合わせて自分が動くとなんか変な動きになるのだ。最終的にはまったく動かないことにした。もしこれが浜崎あゆみのライブだったら名指しで注意されていたと思う。しかし僕は折れなかった。確認する勇気はなかったけれど、たぶん後ろの方には「リズム感」の4文字が欠如した僕と同じような人間がひしめいているはずだ。われわれは踊りにきたんじゃない。ひたすらに音楽を聴きに武蔵野に来たのだ。私は彼らの指標となり、この微動だにしない背中を見せてみんなに勇気を与えよう。
 こんな感じで、大縄跳びにいつまでたっても入れない人みたいな精神的重圧に耐えながら音楽を堪能した。

 最後の曲の「ガール」はかなり開放的な曲調ということもあり、最初のイントロの部分でさすがに僕も体を動かしてみた。「文化祭でモテたいがために作った曲」という話をどこかで聞いたことがあるけど、たしかにスカートの曲の中では明るめだ。ボーカルの澤部さんがギターをかき鳴らす。ドラムスの佐久間さんは髪の毛を振り乱しながらスティックを振るっている。僕のところからベースの清水さんは見えなかったが、重低音がスタジオに鳴り響いている。キーボードの佐藤さんを見たら1人だけ静止していた。
 
 え? って思った。いいの? 1番のAメロは全くやることがないのか、両手を鍵盤の上から下ろして無表情で座っていた。僕が吹奏楽部に入っていたとき、文化祭などで明るい曲を演奏するときは、休みのときも楽しそうに体を揺らせ、という指示を受けていた気がする。演奏者が楽しそうじゃなかったらお客さんも楽しくない、という理論だ。キーボードの佐藤優介氏はその真逆をいっていた。そこの周りだけしめやかな空気が流れていた。演奏するときの様子もものすごく静かだ。遠くから歩いてきたかと思えば大縄飛びの中を通過していくようなクールな雰囲気。別に無理してノリノリにならなくてもいいのだ。そんなことを教えてくれた気がした。

 年内に3rdアルバムが発売されるようなので非常に楽しみにしている。ジャケットはひょっとして森雅之さんなんじゃないかと思うけど、だとしたら今風にいうとネ申だと思う。

 ちなみにスカートを知らない人のために。↓

by msk_khr | 2012-11-06 17:11 | 日々のこと