人気ブログランキング | 話題のタグを見る

memo

福岡の旅

 先週、新幹線に乗って福岡に行った。博多に着いて最初に行ったのが駅ビルに入っていた無印良品だった。いろいろ家で準備をしていたら結局到着が夕方になってしまい、どうしたら良いのかわからなかったのでとりあえず世界で2番目に落ち着く場所である無印で羽を休めたのだ(1番は自分の家)。福岡ならではの違いがあるかと少しだけ期待をしていたが、新宿や有楽町の無印となんら変わりはなかった。無印良品は全国的にすばらしくニュートラルだった。
 お腹がすいていたので博多ラーメンを食べようと思い、JR博多シティという巨大な駅ビルに入っている一風堂というラーメン屋に入った。一風堂は東京の支店でも一度食べたことがあった。東京のメニューとなんら変わりはなかった。もしかするとこの時点で僕はまだ東京にいたのかもしれない。

 福岡旅行の目的は、大野城まどかぴあ版画ビエンナーレを見に行くことだった。初日は時間が間に合わなかったので、夜の博多を散歩することにした。キャナルシティ博多という、千葉でいうららぽーと的な存在の大型ショッピングモールが徒歩10分のところにあったので行ってみた。ユニクロやらZARAやら、東京で見たことのある店が同じようにあった。正直いって退屈だった。新宿や渋谷に良く行く僕はいつのまにかかなりのシティボーイになっていたのかもしれない。面白そうだからちょっと入ってみよう、と思えるような新鮮みのある店はひとつとしてなかった。
 キャナルシティ内の無印にも行った。そのとき僕は新宿の無印で買った秋物のシャツを着ていた。東京の無印にワープしたかのような錯覚に陥った。

 散歩に飽きたので駅に戻った。基本的に今回の旅では版画展に行ってラーメンがたらふく食えればいいと思っていたので、他に果たしたい目的は特になかった。仕方がないので駅ビル内の映画館に行った。そして早く観たいと思っていた「劇場版 魔法少女まどか☆マギカ〈前編〉始まりの物語」をレイトショーで観てしまった。別に東京で観れる映画だった。
 宿については最初からマンガ喫茶に泊まろうと思っていた。いちばん旅行とはかけ離れた場所である。インターネットができないと僕は落ち着かないのだ。パソコンでFacebookにもログインした。始めての一人旅で僕は夜を徹して「惡の華」を読んだ。読みながら完全に福岡に来ていることを忘れていた。

 翌日は昼頃に起きてラーメンを食べた。駅ビルの中にいろんなラーメン屋が集まっている一角があるのだ。とにかくラーメンを思いっきり食べる、これは自らに課したひとつの枷だった。博多には豚骨しかないので、きっと太るだろうと思ったがそんなことはおかまい無しだった。
 版画展が開催されている大野城というところは博多から電車で15分くらいのところにある。予想はしていたが閑散としていた。このような風景には千葉県の東の方に行っても簡単に出会うことができる。大野城まどかぴあという、市の施設や図書館が色々と集合した建物の多目的ホールに僕の版画は飾られていた。
 入賞・入選作品や前回までの大賞の作品など、50点くらいがホールいっぱいに飾られていた。しっかり見ても20分程度で見終わる広さだ。いろんな作風がありすぎて、それぞれの作品の格の違いは全く無いと感じた。絵のコンペの大賞を決めたりするのはものすごく難しい問題だと思う。作品の良さは点数化できないからだ。
 会場内の写真撮影は禁止されていた。マジかよと思った。工房の先生にどういう感じだったか見せたかったので会場の全体の写真を軽く撮りたかった。例外として出品者本人が自分の作品を撮るのだけは許されていたので、受付の人に断ってデジカメで撮った。しかし受付の人がわざわざ付いてきて、カメラを構える僕の斜め後ろに立ってずっと見張っていた。気が散ってあまり上手に撮れなかった。少しでも他の作品が入ったら止めに入るつもりだろうか。となりの作品との感覚は3cmくらいだ。トリミングが難しい。そうまでして彼らは何を守ろうとしていたのだろう。

 その後博多に戻って天神という街までまでてくてく歩いて小さな展示を見たり、ラーメンを食べたり、ミニ温泉みたいなところで汗を流したりしてまたレイトショーを見るに至った。今度は「劇場版 TIGER & BUNNY -The Beginning-」だ。この2日目の夕べは早送りでお届けしたくなるような内容の薄いイブニングだった。映画を見終わったら迷わず僕はマンガ喫茶へ向かった。なぜか普段は全く読まないタイプのマンガである「囚人リク」を読んで寝た。

 別に1泊2日で帰ってきても良かったのだが、どうせ休みが3日あるならと思ってのんびり過ごしたらこの始末。3日目も昼頃に起きて駅ビルでラーメン。それまででいちばん油っぽくて、もういいわいと思った。しかし僕のラーメン縛りのロープが緩むことは無い。とろとろの豚骨チャーシューメンを完食した。
 母親に太宰府というところを勧められていたので、最終日は観光らしいことをしようと思った。天神から電車で1時間くらい。1人で観光地巡りというものはあまり楽しいものではない。太宰府天満宮というところにたどり着き、受験祈願におすすめ、的な旗が掲げてあったので50円投げて予備校の生徒たちの合格祈願。おみくじもあったので引いてみたら小吉。いろいろと興味深いことが書いてあったがすべて忘却。なんかみんな白いひもにおみくじを結んでいたので同じように結ぼうとしたら、白いひもは荷物とかを結ぶのに使うビニールひもだったのでぎょっとした。こんなんでいいのか。もっと綿とか絹で出来た雰囲気のあるひもにしてほしい。
 それだけで帰ってくるのもなんだかもったいなかったので、天満宮に隣接する九州国立博物館で企画展を鑑賞。これも東京で看板だけ見たことあるけどスルーしていた展示だったので、やはりここでもわざわざ福岡で観る意味無し。

 そんなこんなで2泊3日の福岡旅行での出来事はすべて終わるわけだが、本当にわざわざ行く必要があったのか、と自分に問いかけてみると否、という答えが返ってくる。屋台ラーメンは怖くて入れなかったし、博多は駅前のコンビニがポプラということだけがアイデンティティですといった具合の東京と同じくらいの都会だった。版画展は予想外の作品には出会えなかったから、たぶん次回入選したとしても見に行くことは無いだろう。
 あまりにも普段の生活と変わりない3日間だった。逆にただの休日を過ごした感じで、加えて知り合いが誰もいない分、身だしなみとかに手を抜けるから、ものすごく心が解放された3日間だったような気がする。版画工房の人には、1泊2日で行ったと嘘をついてしまった。マンガ喫茶で2泊したなんて口が裂けても言えないからだ。工房では育ちのいい子で通っているのだ。 
 でも貯金さえあれば、こんなふうにマンガ喫茶を転々したりして、着るものも別に毎日同じでいいし、何か足りないものがあれば無印良品に買いに行けばよし、のんびりと流浪の旅をするというのもいいような気がする。今回の旅でわかったことは、旅行というものはそんなに準備しなくても行けるんだということ。関西のほうの面白そうな展覧会とかにも、遠いからという理由だけであきらめるのはもったいないと思えた。来年の春には大阪で文学フリマが開催されるらしいから、もしかしたらそれに出品がてら関西旅行、なんてのもいいかもしれない。

 (ちなみに家に帰って体重を量ったら出発前より1kg増えていた。冬用のツイードのズボンを久々に履いたら明らかに腹がきつくなっていた。今回の2泊3日の旅でこってり系のラーメンを合計6杯食べたことは全く関係がないと思われる)
by msk_khr | 2012-10-15 23:08 | 日々のこと