トレモロについてのはなし⑦
最後に「トレモロ」全体を振り返ってみます。
まずは「トレモロ」を作るときに特に参考にしたものを書き連ねたいと思います。
「ノアラとヨッコラ」。文と絵=西脇一弘。
大学生のときに出会った本で、「トレモロ」を作る直前に読み返したことが「銀河拾い」と「音楽の終わり方」においての文体に影響しています。作者の西脇一弘という方はミュージシャン兼画家で、「ノアラとヨッコラ」は本人初の書籍。ノアラ視点の物語に素敵な挿絵がサラッと入った詩的な中編小説です。「トレモロ」の最後に載せたプロフィールの書き方の参考にもしました。
こちらのサイトで西脇一弘さんの絵が見られます。
「わたしのおじさん」。湯本香樹実・作、植田真・画。
小学生のときに「夏の庭-The Friends-」を読んで以来、湯本香樹実さんの本は全部読んでいるのですが、「わたしのおじさん」は植田真さんというすごく好きなイラストレーターの方が挿絵を描かれているので、最高の一冊といっても言い過ぎではありません。
「トレモロ」に使っているフォントは教科書体というやつで、国語の教科書のような、のどかでちょっと生真面目な雰囲気をイメージしました。一般的に小説で使われる書体の多くは明朝体なのですが、「わたしのおじさん」は珍しいことに教科書体なのです。
植田真さんのサイトはこちらです。
「スカートコードブック」。発行・澤部渡。
ポップバンド・スカートの曲のコード譜が収められた12ページの冊子。これを見ながら僕はギターを練習中です。
「トレモロ」をホッチキス留めの簡素なかたちにしたのは、このコードブックが白黒コピーを束ねてホッチキスで留めただけの超シンプルなものだったので、それを真似したのでした。300円という価格設定も、コードブックの200円に近づけたかったわけです。プロフィールのとなりの「発行」とかの記述の感じも参考にさせていただきました。コードブックの販売はこちらのサイトにて(2012年8月現在品切れ中)。
スカート主催の澤部渡さんのサイトはこちら。いくつかの曲が無料で聴けるコーナーもあります。
さて、いろいろなものに影響を受けながら作った「トレモロ」ですが、なぜこのような大した利益にもならない本なんか作ったのか、という話しです。
前にも書いたかもしれませんが、美術作品というものは高すぎる、という思いが自分の中で非常に強くなってきて、誰にでも手に入れることのできる値段の作品を作りたかったという理由がひとつ。
画廊で展覧会を開けば無料で作品を見てもらえますが、自分の場合、画廊というのは洋服屋さんと同じくらい気が散って、ゆっくり絵なんか見られない・・・。やっぱり自分の作品は、一人ひとりに部屋でこっそり見てほしい。そういうわけで「トレモロ」は夜中に自室でそっと開くのに適した本を目指しました。
しかも「トレモロ」は今後、個展を開くようなことがあれば物販が可能です。画家は一冊くらい作品集を作っておいても損はないような気がします。
上に書いた諸々の理由のほかに、単純に本を作りたいという気持ちもありました。自分の場合、作品を通して描きたいテーマやモチーフというのは決してたくさんあるわけではなく、リトグラフの作品も「トレモロ」で書いた文章の作品も、異なる方法で同じようなことを表現しようとしています。それが成功しているかどうかはわかりませんが・・・。ともかく、文章を書くのは絵を描くのと同じくらい好きなことなので、これからはどちらも平行して作っていくつもりです。
それらが合わさってかたちになっているのが「本」という媒体です。本づくり自体、作品づくりと同様に非常に楽しいものでした。ページの構成、書体、紙の種類の選択・・・。「本」という表現手段に僕はとても大きな可能性を感じます。本当に作りたかったのは本だったのかな、という気さえしています。
「トレモロ」は全ページ、Adobe社のIllustratorというソフトを使って作りました。印刷はCanonの家庭用プリンターで行いました。思った以上に印刷と製本に時間がかかったので、次回作は印刷所に頼んで、少しだけしっかりしたものを作りたいと思います。できれば挿絵はすべて描き下ろして、ページ数ももう少し増やして・・・。参加できるかはまだわかりませんが、11月の「文学フリマ」に向けて頑張って作ろうと思っています。
まずは「トレモロ」を作るときに特に参考にしたものを書き連ねたいと思います。
「ノアラとヨッコラ」。文と絵=西脇一弘。
大学生のときに出会った本で、「トレモロ」を作る直前に読み返したことが「銀河拾い」と「音楽の終わり方」においての文体に影響しています。作者の西脇一弘という方はミュージシャン兼画家で、「ノアラとヨッコラ」は本人初の書籍。ノアラ視点の物語に素敵な挿絵がサラッと入った詩的な中編小説です。「トレモロ」の最後に載せたプロフィールの書き方の参考にもしました。
こちらのサイトで西脇一弘さんの絵が見られます。
「わたしのおじさん」。湯本香樹実・作、植田真・画。
小学生のときに「夏の庭-The Friends-」を読んで以来、湯本香樹実さんの本は全部読んでいるのですが、「わたしのおじさん」は植田真さんというすごく好きなイラストレーターの方が挿絵を描かれているので、最高の一冊といっても言い過ぎではありません。
「トレモロ」に使っているフォントは教科書体というやつで、国語の教科書のような、のどかでちょっと生真面目な雰囲気をイメージしました。一般的に小説で使われる書体の多くは明朝体なのですが、「わたしのおじさん」は珍しいことに教科書体なのです。
植田真さんのサイトはこちらです。
「スカートコードブック」。発行・澤部渡。
ポップバンド・スカートの曲のコード譜が収められた12ページの冊子。これを見ながら僕はギターを練習中です。
「トレモロ」をホッチキス留めの簡素なかたちにしたのは、このコードブックが白黒コピーを束ねてホッチキスで留めただけの超シンプルなものだったので、それを真似したのでした。300円という価格設定も、コードブックの200円に近づけたかったわけです。プロフィールのとなりの「発行」とかの記述の感じも参考にさせていただきました。コードブックの販売はこちらのサイトにて(2012年8月現在品切れ中)。
スカート主催の澤部渡さんのサイトはこちら。いくつかの曲が無料で聴けるコーナーもあります。
さて、いろいろなものに影響を受けながら作った「トレモロ」ですが、なぜこのような大した利益にもならない本なんか作ったのか、という話しです。
前にも書いたかもしれませんが、美術作品というものは高すぎる、という思いが自分の中で非常に強くなってきて、誰にでも手に入れることのできる値段の作品を作りたかったという理由がひとつ。
画廊で展覧会を開けば無料で作品を見てもらえますが、自分の場合、画廊というのは洋服屋さんと同じくらい気が散って、ゆっくり絵なんか見られない・・・。やっぱり自分の作品は、一人ひとりに部屋でこっそり見てほしい。そういうわけで「トレモロ」は夜中に自室でそっと開くのに適した本を目指しました。
しかも「トレモロ」は今後、個展を開くようなことがあれば物販が可能です。画家は一冊くらい作品集を作っておいても損はないような気がします。
上に書いた諸々の理由のほかに、単純に本を作りたいという気持ちもありました。自分の場合、作品を通して描きたいテーマやモチーフというのは決してたくさんあるわけではなく、リトグラフの作品も「トレモロ」で書いた文章の作品も、異なる方法で同じようなことを表現しようとしています。それが成功しているかどうかはわかりませんが・・・。ともかく、文章を書くのは絵を描くのと同じくらい好きなことなので、これからはどちらも平行して作っていくつもりです。
それらが合わさってかたちになっているのが「本」という媒体です。本づくり自体、作品づくりと同様に非常に楽しいものでした。ページの構成、書体、紙の種類の選択・・・。「本」という表現手段に僕はとても大きな可能性を感じます。本当に作りたかったのは本だったのかな、という気さえしています。
「トレモロ」は全ページ、Adobe社のIllustratorというソフトを使って作りました。印刷はCanonの家庭用プリンターで行いました。思った以上に印刷と製本に時間がかかったので、次回作は印刷所に頼んで、少しだけしっかりしたものを作りたいと思います。できれば挿絵はすべて描き下ろして、ページ数ももう少し増やして・・・。参加できるかはまだわかりませんが、11月の「文学フリマ」に向けて頑張って作ろうと思っています。
by msk_khr
| 2012-08-25 23:58
| 本について