もうすぐ個展です

切手を買うお金がないために個展のDMをまだ誰にも送れていない僕をあざ笑うかのように、浴室の電球がぷつっと切れました。我が家はトイレと洗面所と浴室が一緒になっているので、とても不便です。とても不便といいながら、切れてから1週間が経とうとしています。今は60Wの電球を買うお金さえ節約したいのです。
最初の2日くらいはドアを開け放ち、台所の明かりを取り込むことでなんとかしのいでいました。月明かりの中で水浴をするような幻想的な気分は味わえたのですが、3日目を迎えると入浴が憂鬱になりました。そこで僕は、さわやかな陽光が差し込む午前中にシャワーを浴びることにしました。浴室には窓があるので、電気を付けなくても日中は明るいのです。朝早くから出勤する必要のない今の生活スタイルに感謝すべきでしょう。しかし真っ当に就職してお金を一人前に稼いでいれば、電球の新調をケチる人間にはなっていなかったとも言えます。
仕方なく、今月も親にお金を借りてしまいました。個展は企画展という形でやらせていただくので、画廊に賃料を支払う必要はないのですが、その他諸々の雑費が僕の財布から小銭をテンポよく奪っていくのです。お金がどうしても足りないときは親にメールをするのですが、僕はその際銀行に振り込んでもらうのではなく、実家に必ず会いに行くということを自分のルールとしています。親に顔を見せて安心させるという意味ももちろんありますが、ついでに晩御飯を実家で食べることで、偏った栄養バランスの均衡を図ることも大事な目的の一つとしているからです。
借りたお金は作品の売り上げでいつか返すつもりなので、芸術の世界で絶対に成功しなければなりません。成功するまで、僕は親からお金を搾取することになるでしょう。成功するための第一歩として今回の個展があります。作品は自信を持って見せられるものだと思っているので、運命の鍵を握るのは世間への宣伝と、画廊での僕の振る舞いです。できるだけ自分の存在に気付かれぬよう、在廊中に完全に気配を消す秘密の修行に取り組んでいます。
by msk_khr
| 2011-11-11 18:38
| 日々のこと