トークしまShow
エド・はるみのトークライブを見に行った。応援中の芸人であるマヂカルラブリーがゲストとして招かれるという情報を手に入れたからだ。よしもとの若手芸人のライブの客層の95%は若い女性。開演前、友達と一緒にキャピキャピと話をする女子たちの中で、独り所在なく待機する時のアウェイ感は何度経験しても慣れることはない。失礼ながら今回はあまり客が集まりそうにないと思ったので、比較的楽な気持ちでチケットを買った。
ライブの2日前にチケットを買ったのに、一番見やすい最前列の席。さすがにびっくりした。135人入る劇場だが、お客さんは多く見積もって15人くらい。マヂカルラブリーは売れてないから客持ちが少ないのはわかる。しかしエド・はるみファンは日曜日なのに何をしているのだろう。エドさんは告知を一切していないのだろうか。もしくはエドさんの時代はとうに過ぎてしまったのだろうか。
●オープニング
見たことのないおじいさんのバイオリンのソロ演奏からライブは始まった。やがて舞台が明るくなり、真っ赤なドレスに身を包んだエド・はるみが登場。おじいさんの演奏が微妙に下手だったので、ゆるい空気を作り出すための演出として今年からバイオリン教室に通い始めた親族でも呼んだのかと思ったらプロだった。指揮をやっている鶴田さん(80)。エドさんが以前彼の楽団の演奏を聴いて、ぜひライブに出演してくれないかと熱烈なラブコールを送ったそうだ。少しの時間2人でトーク。鶴田さん(通称つるじい)はユーモア溢れる素敵な人物だったので、僕は先ほどの不安定な演奏を許した。
●ライブ前半
つるじいがはけると、エド・はるみが客席全員にランダムに話しかけ始めた。「げ・・・」と思った。学校の授業を思い出す。お客さんの中には名古屋とか大阪から新幹線で来ている人もいた。素晴らしいファンだ。僕は年齢と、何でこのライブを知ったのかを聞かれ、「マヂカルラブリーのホームページを見て」と正直に答えた。男性ファンというのは珍しいので「どちらがタイプですか?」とお決まりのような追撃を受けた。僕はとびっきりの純粋な笑顔で「両方です」と答えた。
客との絡みから自然な流れで約20分間のフリートーク。さすがに話が上手かった。しかし僕の席からは舞台袖でトークの流れを書いたスケッチブックを持つスタッフの姿がちらちら見えた。ある程度話の流れを作っておき、5分単位くらいで区切れるようにオチをつけるという構成のようだ。中盤の話で「ミサンガ」を「サミンガ」と言ってしまい、しかもそれがオチだったので一瞬変な空気になり、客席に「サミンガであってます?」と聞いたの以外は完璧なトークだった。客から一斉に「ミサンガです」と教えられ、「やだもう〜!」と赤面するエド・はるみ。逆に好感度がグンと上がった。
●ライブ後半
続いての後半はゲストを迎えてのトークだ。どうやらこのライブでは毎回エドさんがゲストに手料理を振るまっているらしい。テーブルなどの準備中は再びつるじいの生演奏。やはり80歳という年齢をもろに感じさせるようなギリギリの旋律だった。
マヂカルラブリーが登場し、自己紹介が終わったあとに「今日は男性ファンの方も1人でいらしてくれたんですよ〜」と要らんことをエド・はるみが言って僕はまたいじられた。しかし2人に3mくらいの至近距離から「どうもありがとうございます」と丁寧にお礼を言われ、僕はすぐに笑顔になった。お笑い芸人にとって男性ファンの獲得は嬉しいものらしい。女性ファンにはミーハーが多い。しかし男性客にそれはない。ネタが面白い芸人でなければ絶対にファンにならないからだ。マヂカルラブリーはどちらかといえば男性向けのネタだと僕は思っている。中でも子どもの頃から漫画やゲーム、アニメなどのインドア文化に親しんできた人の琴線に触れる笑いだ。彼らの少年漫画的な間と動きと言葉選びが僕は好きなのだ。
その後、マヂカルラブリーの野田クリスタルと僕が同い年というしょうもない話題でまた僕はいじられた。その辺りで、このいじりはエドさんの親切心であることに気付いた。こんなに客と出演者が絡むノリのライブはない。客の少ない今日だからできることだ。また僕の中でエド・はるみさんの好感度がアップした。
エドさんが作ってきたのは「りんご味の豚肉のしょうが焼き」。ゲストの2人は美味しそうに料理を食べながら、それぞれの芸名の由来やコンビ結成のきっかけなどの質問に答えていく。中でも印象に残っているのは「マヂカルラブリー」というコンビ名についてのトークだ。ウィキペディアにも書いてあるが、「マジカル」ではなくあえて「マヂカル」にしたのは、ネットで検索したときにヒットしやすくするためだという。「マジカルラブリー」だとすでにある何かのサイトが出てきてしまうらしい。そこでエドさんが疑問を述べた。「でも、〈ヂ〉より〈ジ〉の方がアイウエオ順で早く来ますよね」。固定概念を覆すような発言だった。「いや、あの、検索なんでそれは関係ないです」「辞書ではないんで」などとゲストの2人が一生懸命説明するも、最後までエドさんの理解が得られることはなかった。僕は時代というものの恐ろしさを痛感した。
●エンディング
最後はエドさんの歌を聞いて終わり。「聞かせてよ愛の言葉を」をエアーお客さんに花束をもらう&握手を交わしつつ熱唱。「怖い」「気がふれたかと思いました」というゲストの感想の言葉にすべてが集約されたような2分間だった。
つるじいも最後に登場し、1時間のトークライブはあっという間に終了した。面白いライブだった。今までエド・はるみさんにはあまり関心がなかったが、これからは応援していきたいという気持ちでいっぱいになった。テレビに出ていなくても、芸人はいろいろな劇場で公演を行っている。大きなメディアだけがお笑いの舞台ではないのだ。
丁寧にアンケートを書き、僕は劇場から外に出ようとした。すると入り口付近に独り佇む、つるじいの後ろ姿が逆光のシルエットで見えた。「むかし大切に育てていた木」を思わせるひょろっとした体。小さなリュックサックを背負うその背中があまりに寂しそうだったから、僕は彼に生気を吸い取られる前に素早くその横を通り過ぎた。
ライブの2日前にチケットを買ったのに、一番見やすい最前列の席。さすがにびっくりした。135人入る劇場だが、お客さんは多く見積もって15人くらい。マヂカルラブリーは売れてないから客持ちが少ないのはわかる。しかしエド・はるみファンは日曜日なのに何をしているのだろう。エドさんは告知を一切していないのだろうか。もしくはエドさんの時代はとうに過ぎてしまったのだろうか。
●オープニング
見たことのないおじいさんのバイオリンのソロ演奏からライブは始まった。やがて舞台が明るくなり、真っ赤なドレスに身を包んだエド・はるみが登場。おじいさんの演奏が微妙に下手だったので、ゆるい空気を作り出すための演出として今年からバイオリン教室に通い始めた親族でも呼んだのかと思ったらプロだった。指揮をやっている鶴田さん(80)。エドさんが以前彼の楽団の演奏を聴いて、ぜひライブに出演してくれないかと熱烈なラブコールを送ったそうだ。少しの時間2人でトーク。鶴田さん(通称つるじい)はユーモア溢れる素敵な人物だったので、僕は先ほどの不安定な演奏を許した。
●ライブ前半
つるじいがはけると、エド・はるみが客席全員にランダムに話しかけ始めた。「げ・・・」と思った。学校の授業を思い出す。お客さんの中には名古屋とか大阪から新幹線で来ている人もいた。素晴らしいファンだ。僕は年齢と、何でこのライブを知ったのかを聞かれ、「マヂカルラブリーのホームページを見て」と正直に答えた。男性ファンというのは珍しいので「どちらがタイプですか?」とお決まりのような追撃を受けた。僕はとびっきりの純粋な笑顔で「両方です」と答えた。
客との絡みから自然な流れで約20分間のフリートーク。さすがに話が上手かった。しかし僕の席からは舞台袖でトークの流れを書いたスケッチブックを持つスタッフの姿がちらちら見えた。ある程度話の流れを作っておき、5分単位くらいで区切れるようにオチをつけるという構成のようだ。中盤の話で「ミサンガ」を「サミンガ」と言ってしまい、しかもそれがオチだったので一瞬変な空気になり、客席に「サミンガであってます?」と聞いたの以外は完璧なトークだった。客から一斉に「ミサンガです」と教えられ、「やだもう〜!」と赤面するエド・はるみ。逆に好感度がグンと上がった。
●ライブ後半
続いての後半はゲストを迎えてのトークだ。どうやらこのライブでは毎回エドさんがゲストに手料理を振るまっているらしい。テーブルなどの準備中は再びつるじいの生演奏。やはり80歳という年齢をもろに感じさせるようなギリギリの旋律だった。
マヂカルラブリーが登場し、自己紹介が終わったあとに「今日は男性ファンの方も1人でいらしてくれたんですよ〜」と要らんことをエド・はるみが言って僕はまたいじられた。しかし2人に3mくらいの至近距離から「どうもありがとうございます」と丁寧にお礼を言われ、僕はすぐに笑顔になった。お笑い芸人にとって男性ファンの獲得は嬉しいものらしい。女性ファンにはミーハーが多い。しかし男性客にそれはない。ネタが面白い芸人でなければ絶対にファンにならないからだ。マヂカルラブリーはどちらかといえば男性向けのネタだと僕は思っている。中でも子どもの頃から漫画やゲーム、アニメなどのインドア文化に親しんできた人の琴線に触れる笑いだ。彼らの少年漫画的な間と動きと言葉選びが僕は好きなのだ。
その後、マヂカルラブリーの野田クリスタルと僕が同い年というしょうもない話題でまた僕はいじられた。その辺りで、このいじりはエドさんの親切心であることに気付いた。こんなに客と出演者が絡むノリのライブはない。客の少ない今日だからできることだ。また僕の中でエド・はるみさんの好感度がアップした。
エドさんが作ってきたのは「りんご味の豚肉のしょうが焼き」。ゲストの2人は美味しそうに料理を食べながら、それぞれの芸名の由来やコンビ結成のきっかけなどの質問に答えていく。中でも印象に残っているのは「マヂカルラブリー」というコンビ名についてのトークだ。ウィキペディアにも書いてあるが、「マジカル」ではなくあえて「マヂカル」にしたのは、ネットで検索したときにヒットしやすくするためだという。「マジカルラブリー」だとすでにある何かのサイトが出てきてしまうらしい。そこでエドさんが疑問を述べた。「でも、〈ヂ〉より〈ジ〉の方がアイウエオ順で早く来ますよね」。固定概念を覆すような発言だった。「いや、あの、検索なんでそれは関係ないです」「辞書ではないんで」などとゲストの2人が一生懸命説明するも、最後までエドさんの理解が得られることはなかった。僕は時代というものの恐ろしさを痛感した。
●エンディング
最後はエドさんの歌を聞いて終わり。「聞かせてよ愛の言葉を」をエアーお客さんに花束をもらう&握手を交わしつつ熱唱。「怖い」「気がふれたかと思いました」というゲストの感想の言葉にすべてが集約されたような2分間だった。
つるじいも最後に登場し、1時間のトークライブはあっという間に終了した。面白いライブだった。今までエド・はるみさんにはあまり関心がなかったが、これからは応援していきたいという気持ちでいっぱいになった。テレビに出ていなくても、芸人はいろいろな劇場で公演を行っている。大きなメディアだけがお笑いの舞台ではないのだ。
丁寧にアンケートを書き、僕は劇場から外に出ようとした。すると入り口付近に独り佇む、つるじいの後ろ姿が逆光のシルエットで見えた。「むかし大切に育てていた木」を思わせるひょろっとした体。小さなリュックサックを背負うその背中があまりに寂しそうだったから、僕は彼に生気を吸い取られる前に素早くその横を通り過ぎた。
by msk_khr
| 2011-05-24 19:11
| 日々のこと