人気ブログランキング | 話題のタグを見る

memo

どうも怪しい

 僕の通っている版画工房は、国立市にある小さなビルの地下1階にある。その上の1階には以前絵本の専門店があったのだが、僕が工房に通い始める前にそのお店はなくなってしまい、今は天然石を売るお店がテナントとして入っている。そこがどうも怪しいのである。
 この前、同じ曜日に通っているSさんが、そのお店の前でもらったチラシを見せてくれた。僕は興味深くそれを覗き込んだ。水晶とかメノウ石とか、いわゆるパワーストーンのお店だと思っていたが、アロマテラピーやスピリチュアルのサロンとしても営業しているらしい。チラシにはそのお店のいろいろなメニューが紹介されていた。

 まず目に飛び込んできたのは「エターナルグロウ」というフレーズ。爆笑した。一瞬、仲間のMPを毎ターン10ポイントずつ回復する魔法かと思った。「エターナル」なんてRPGの世界でしか聞いたことがない。
「ソウルエナジーリーディング」というのもあった。「エネルギー」ではなく「エナジー」にしたのは完全にかっこつけだろう。自分が自分であるために、天使や守護霊、守護神などから「メッセージ」を受け取ることができるという。怖くなった。内容がまばゆい光に包まれすぎていて何も見えない。しかも28,000円。目を疑った。本気なんだろうか。僕だったらそのお金でビルケンシュトックの靴を買う。

 怪しい、怪しいと工房の方々と話をしていると、先生が工房の扉を半開きにした。換気のためだ。リトグラフの製版作業の工程ではシンナーを用いることがある。地下の工房の扉から上階に流れていく微かな刺激臭。
 「ラールヴェリテ・リトグラフィ研究所」という正体不明の名のもとに、一見共通点の無さそうな男女が毎日集まり何かをせっせと作っている。「ファースト・エッチ」「ビクトリア」「ダーマトグラフ」「ローラーブレンド」・・・謎めいた数々の専門用語。そして皆から「先生」と呼ばれる男・・・。

 僕らの存在も、じゅうぶん怪しいのだった。
by msk_khr | 2011-05-21 00:52 | 日々のこと