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memo

伝えたいこと

 タイムマシンがあったなら、僕は10年前の自分に会いに行きたい。そして、10年後に自分がちゃんと創作の道を歩んでいることを教えてやりたい。

 10年前の僕は、憧れの作家たちが「作家」になるまでどのように生きてきたかをとても知りたがっていた。その道すじに沿って生きることで、自分もいつか何かしらの作家になれると信じていた。逆にそうしなきゃ作家になれないと思っていた。物心つく前から自然と芸術に触れながら育ってきたような人に嫉妬を覚え、子どもの頃から絵を描くのが好きだったわけでもない自分の素養に自信がなかった。

 けれど僕は10年経ったら画家になれていた。他人の道のりがどうかなんて今思えば関係なかった。世界中の人間が毎日日記をつけていたとして、その内容が僕と完全に一致する人なんてどこを探したっていないのだ。自分は自分だけの道のりで生きてきたのだから、それで充分だった。

 近頃ようやく自分の表現したい世界が見えてきて、作品を作るのがものすごく楽しいということを中学生の自分に伝えたい。描きたい作品のイメージは頭の中にあるのに、表現力がなくて作品にできなかった高校生の自分に今のリトグラフを見せてやりたい。「すべて創作のためだ」と自己を正当化し、貯金もしないでCDを大人買いしていた大学生の自分に今月の預金残高を本当に見せてやりたい。

 千円札がなく、PASMOにお金をチャージすることができないので小さな箱に貯めていた十円玉をいっぱい使って職場までの切符を買い、年末に実家に帰ったときに父から貰ったまま最後の切り札として大切に取っておいた「すき家で使える500円分のお食事券」でついにご褒美の牛丼を食べた昨日の自分に、給料が実はおとといすでに振り込まれていたという悲しい事実を泣きながら教えてやりたい。
by msk_khr | 2011-02-19 23:50 | 日々のこと