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memo

聖なる洗濯

 僕は母親のお腹の中にいる頃からサンタクロースの存在を信じていなかったので、クリスマスの朝に枕元に置かれていたものを目にしたときには思わず目を疑った。何かの間違いだと思った。

 サンタクロースはクリスマスの前の夜にそりに乗って現れ、枕元に吊るされた靴下の中にプレゼントを入れてくれるというとてつもない発想の人物だ。
 しかし本当はサンタなんかいなくて、その子の親がプレゼントを用意しているのだが、今実際に親から欲しいものを聞かれても僕は正直困ってしまう。欲しいものはもう自分で買えるし、それは靴とか時計とかハーマンカードン社のスピーカーシステムとか、自分の欲を満たすだけのくだらないものばかりである。本当に欲しいものというのは誰かにもらうことなんてできないのだ。

 そのような無欲すぎる心持ちがかえってサンタの反感をかったのかもしれない。僕がその日与えられたものは罰だった。苦行だった。素直にトリッペンの革靴の画像をプリントアウトして枕元に置いておけばよかったのだ。
 
 目が覚めると僕は枕元を見やった。そこには明らかに1週間分の下着類がうずたかく積まれていた。先週の朝と全く同じ光景だった。寝る前からはっきりとわかっていた。その中にはプレゼントが入っている可能性を有する靴下も含まれていたが、どう見てもただの洗濯物でしかなかった。試しに鼻を近づけてみるとなぜか金属的なにおいがした。

 僕は一切の感情を込めず全く無駄のない動きで恐ろしく機械的にそれを洗濯機に放り込んだ。
by msk_khr | 2010-12-25 23:28 | 日々のこと