人気ブログランキング | 話題のタグを見る

memo

明日もカレー

 カレーという料理を作った。ひとり暮らしを始めてもう半年以上経つが、ついにカレーを作るまでに成長してしまったのだ。
 先々週初めて作ったクリームシチューは大変満足のいくおいしさに仕上がった。全くのノーミスだった。味も、具材のバランスもすべて完璧に作ることができた。まさに完全勝利だ。不遜にも、この家に友人たちを招待してシチューを振る舞おうかという甘い想像を膨らませてしまったほどだ。その時僕の脳裏に、「もしかしたらカレーもいけるんじゃないか」という考えがよぎった。シチューを口に入れた瞬間にその思いは確信へと変わった。その夜はクリームシチューだけで腹を満たした。それ以上は何も必要なかった。強いていうなら4皿分も作ってしまったことが唯一の反省点だった。

 カレーとクリームシチューの作り方は酷似している。それぞれのルーのパッケージ裏の作り方を見ると、煮込む時間は多少異なるものの、使用する材料も水を入れるタイミングも一緒である。大きく違うことといえば、クリームシチューの場合はルーを入れて少し煮込んだあと、牛乳を加えてまた煮込むというところだけだ。
 一つのことを覚えると他の事柄に応用できるということは、料理に限らず結構多いような気がする。リトグラフの製版作業においても、その版を黒インクで刷るのかカラーインクで刷るのか、またはベタ面だけのイメージを刷るのか調子の変化のあるイメージを刷るのかによって、微妙に作業内容が変わってくる。こういう場合は一つの基準となるやり方を完璧に覚えてしまった方がいい。そうすれば、あとはそのやり方から何を加えたり何を省いたりすればいいかを覚えればいいだけだ。

 料理というものは作品の制作に似ているところがあるので、作るのがとても楽しい。まずジャガイモ、ニンジン、タマネギをそれぞれ一口大にカットする。ニンジンを切るときは家庭科の授業で習得した「乱切り」という技を使った。具材を手前に回しながら斜めに包丁を入れる。切り口の表面積が大きいので熱が通りやすく、味も染み込みやすいそうだ。肉は値段と満腹感のバランスを考慮し、若鶏のムネ肉を選択。こちらも一口サイズに切る。質のいい包丁を買えばもっと料理が楽しくなると思うのだが、良さげな包丁が8千円くらいするので踏みとどまっている。下手すると僕の1ヶ月分の食費よりも高い。
 厚手の鍋にサラダ油を熱し、切った材料を炒める。混ぜるための道具が菜箸しかないため、握力の消耗が激しい。竹製の調理ベラが欲しいところだ。適当に炒めたら850mlの水を投入。我が家では計量カップではなく、国立科学博物館のミュージアムショップで購入した500mlの実験用ビーカーを愛用している。
 沸騰したらアクが浮いてくる。このアク取りがやっかいだ。なにか手軽な方法はないかとネットで調べてみたところ、くしゃくしゃにシワをつけたアルミホイルを2〜30秒表面に浸けるとアクが見事にとれるという情報を得た。早速やってみるとなかなかの効果を発揮。アルミホイルは洗えばまた使えると書いてあったが、なんとなく不衛生な気もするので捨てることにした。
 ふたをして約15分間煮込む。その間、マヂカルラブリーの漫才をYouTubeで視聴。最近はこればっかりだ。1日1回は必ず見ている気がする。まさにマヂカルラブリー中毒。「マンション4  vol.1」という他事務所の芸人たちとの合同ライブのチケットも取ってしまった。新宿のV-1というキャパが65人くらいの小さな会場でやるという。発売日から2週間くらい経ってからチケットを買ったのに、整理番号がなんと18番だった。これってもしかして全然売れてないんじゃないだろうか。
 
 タニタ製のキッチンタイマーが鳴り響いたので、一旦ガスコンロの火を止める。ルーを半量、砕きながら投下した。このときなぜ火を止めなければならないかという説明は記されていない。火を付けたまま入れると何か恐ろしいことが起きるのだろうか。わざわざ止めるように書くのには必ず理由があるはずだ。ルーを菜箸で溶かしながら、まあどうでもいいかと思った。
 ルーを入れた瞬間から、急に台所の空気が「今夜はカレー」めいてきた。しかし食べるのはまだ早い。とろみが出るまで、もう10分ほど弱火で煮込まなければならない。ご飯ももうすぐ炊きあがりそうだ。昂る気持ちを抑え、僕はなおもマヂカルラブリーのネタを見ながらその時を待った。

 10分後、おいしそうなバーモントカレーができあがった。しかし6皿分だった。作る前にわかってはいたが、あと5人ほど人手が足りない。
 
 1おかわりで飽きた。
by msk_khr | 2010-10-27 02:38 | 日々のこと